幼い頃から繰り返し鼓膜に届き続けた言葉を、いつしか自身の子供に投げかける立場となったにも関わらず、自分自身はキチンと実践出来ていない「うしろめたさ」を、今度は心に届け続ける三文字、それが「片付け」なる、正直面倒な作業です。想い描く風景の中ではあくまで自然に整然と収納されているはずの日用品ですが、現実は各々が自由奔放に居場所を確保しているかの如き状態の中、家族から次々と「あれが見あたらない」「あれはどこへ行った」の質問が飛び交うばかり。更に尋ねられた当事者側も見失っている状況となれば、自ずと全員が苛立ち不機嫌モードに陥ってしまっても不思議ではありません。
拭き掃除や掃き掃除に洗濯はどちらかと言えば得意分野で、料理は大好きで腕にも自信満々なれど、一連の家事の中で唯一、片付けだけが苦手で腰が重く、それぞれのアイテムの定位置すら怪しい毎日という方々は、全国各地に大勢おられるに違いありません。綺麗に洗い上がった洗濯物が足下に山積み、家族一同大満足の夕食後、洗い上がった食器がシンク付近にこちらも点在となれば、最期の締め括りが為されていないばかりに、それまでの自身の頑張り自体が帳消しとなってしまっても致し方ありません。何より「何とあせねば」との気づきをお持ちなだけに、友人を自宅に招いたり、子供が友達を連れて来る事にばかり神経過敏となってしまえば、良好な人間関係や地域との付き合いにまで支障が生じ兼ねません。
幼い頃は大人の声が日々うるさかった「おかたづけ」は幾つもの季節を数える中、自ら率先しての実践が義務の「片付け」となり、あくまで自然体での習慣とすべき、公私あらゆる場面で求められる作業に位置づけられます。苦手面倒だからとその場その場の回避を重ねたその先に、果たしてどのような状況が待っているのか、誰もが重々承知しています。されど自身に甘い姿勢が首をもたげてしまい、お決まりの「次でいいや」「まあいいか」に落ち着いてしまうのもまた、片付けなる作業の一面です。ここではもう1歩踏み込んで苦手意識を克服したい方、あるいはヤル気はあれど具体的なノウハウに窮されている方々に向け、楽しみながら片付けを実践するヒントをお届けします。特に専門的な知識や高度な技術、そして多大な時間や労力を費やす必要などは見当たらぬ、単なる日常的な習慣に過ぎない片付けです。皆さんが無意識の中で先入観や固定観念化している「何か」がブレーキとなっている現状を再検証から、何よりチャレンジ精神をご自身の中に確かめていただければ幸いです。